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彼は家が接骨院なので、塾の友人達から「せっこつ君」と呼ばれていた。
塾にいた頃の「せっこつ君」には、向学心とか、生きる力とか、教師が子供に持って欲しい要素が全く見られず、骨がコンニャクでできている軟体動物みたいにヘラヘラしていて、私は毎日のように彼を叱っていた。せっこつ君の前で癇癪玉を破裂させたことも1度や2度ではなかった。せっこつ君の言動は、私の「説教中枢」を刺激した。せっこつ君は私の言葉を、笑いながら柳に風と無言で受け流すだけだった。 結局せっこつ君は第1志望の高校に不合格になり、瀬戸内海の島にある高専に進学した。その後しばらく私は、せっこつ君と会う機会がなかった。 ところが2年前尾道駅のホームで、偶然せっこつ君と出会った。中3で塾を卒業してから6年経つから、彼は21歳になっているはずだ。 最初彼の姿を見た時「せっこつ君によく似た若者がいるな」と、他人の空似じゃないかと勘違いした。顔の輪郭は中3の時のままだが、中3の時のぼやけた表情とはうって変わって、精悍で浅黒い顔に変わっていた。まるで兵役を終えたばかりの青年のように、引き締まった凛々しい顔をしていた。でもその青年は、せっこつ君に違いなかった。 PR |
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